最近思う事
〜 とある日曜日の出来事 〜
これは全て事実です
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朝、いつもよりやや早く目覚める。いい天気なので、軽快に仕度を済ませ、
朝兼昼食をとりにファミレスへとむかう。虎の門にあるジョナサンは、僕が
週に1度は行く処だ。少し早い時間だったのと、連休というせいか、店は
やや静かに感じられた。それでも昼が近くなると、次第に客足も増えてきた。
賑やかになってくる店を後にして、僕はこれからどうしたものかと考える。
このまま部屋に戻ってしまうにはあまりにいい天気だ。たいしてあてもなく、
漠然と進路を北に決めて、僕は進みはじめた。
内堀通りを通り、皇居周辺に差し掛かると、道路を封鎖しているのに気付い
た。連休などは、そのようにしてそこをサイクリングロードにしているのだ。
小さい子と一緒に走る親達や、仲良さそうに走るカップル達、中には外人の
グループもあった。お昼過ぎ、天気もよく、みんなそれぞれに楽しそうだった。
「ゴールデンウィークなんだ」そう思った。
更に進み、平川門で右へそれて白川通を通る。神保町を通り過ぎ、更に北へ
進む。水道橋を通過し、東京ドームと後楽園を左に見ながら更に行き、春日
通りと交差するところで右に折れる。ここまで特に意識して右折や左折をし
た訳ではない。街の見え方や陽の差し方、風向きなどで道を決めているだけだ。
いわゆる、「気の向くまま」というのにほかならない。
春日通りを進んでいると、ある標識が目に入った。「東京大学 ここより左
160m」軽い好奇心で左へそれる。しかしそちらは赤門のある正面ではな
く、ちょうど裏側の附属病院のある通りだった。まあいいやと思いながら、
附属病院やグラウンドを右に左にみながら進む。突き当たりに理学部棟があ
り、小さなバスロータリーをぐるりと回って右へ進む。規模もレベルも、そ
して権威も全く比べ物にはならないが、自分の学生時代をふと思い出す。連
休でほとんど人とすれ違わなかった事が、どこかしらノスタルジックな気分
にさせたのだ。
やや急な坂を下り、裏門をくぐり、更に進むと不忍池に出た。上野まで来て
しまったのかと他人事のように驚く。一回りしてみようと進むと、物凄い人
混みにまた驚く。池の上はまるでオンシーズンの海水浴のようにボートでご
ったがえしている。やや呆れ顔でそんな光景を眺めながら、人混みを掻き分
け掻き分け先へと進む。弁財天をくぐると、屋台の出店が何件も並んでいる。
一服しようとそこで足をとめる。生ビールを買って飲み、陽射しがかなり強
くなってきたのでブラウスを脱ぎ、マルボロを1本吸う。それにしてもすご
い人の多さだ。子供連れの家族、カップル、上半身裸で酒盛りをしている外
人グループ、、、 そして異常に暑い。まだ5月初めだというのに、僕の両
腕はすでに赤みを帯びている。ビールもすぐ温くなりそうだったので、素早
くジョッキを空ける。しばらくの間、人の流れを眺めながらぼーっとしていた。
それからふと思って上野動物園へと足を向ける事にした。チケットを買う行
列が幾重にも並んでいたが、僕はフリーパスで通る事ができた。しかし、園
内の人の多さは想像をはるかに超えていた。動物を観にきたのか人を観に来
たのかまったくわからなくなってしまった。前回来たのは平日だったので、
そのあまりのギャップに半ば圧倒されたのだ。
ざっと半周して、諦めてもうでることにした。
人の流れに沿って、気がつくと上野駅に向かっていた。若い駅員に声をかけ
るとすぐに切符を買いに行ってくれた。JRに乗れるのかと驚いていたが、そ
の思いはすぐに打ち消された。年配の駅員が2、3人、僕の周りを囲み、ち
らちらみながら「これは乗れないんだよねえ」と恫喝的に言った。
「でも今さっき、別の駅員が切符を買いに行ってくれたんですけど」
「しかしね、これは特殊な車椅子だから駄目なの。わかる? 車内でなんか
あったら危険でしょ?」
僕の言葉を遮るように年配の駅員は言う。僕はやや呆然としながらそこに立ち尽くす。
切符を買いに行った若い駅員が年配の駅員に何かを言われて、返金をしにま
た戻っていく間に、もう一人別の駅員が来た。年は僕とにたようなくらいだ
が、制服が違っていたので少し偉い人なのだと思った。
「どこから来たの?」やや口臭のきつい息を吐きかけながらその駅員は言う。
「新橋からです」
「どうやって来たの?」
「これでです」
「どうやって帰るの?」
「電車に乗せてもらえたらと思って」
「で、どこから来たの?」
3回くらいそんなやりとりが繰り返されて、いい加減僕はキレた。
「あなた頭悪いんじゃないですか? 疲れたから帰りは乗せて欲しいと言っ
てるんじゃないですか!?」
「しかしね、決まってる事は決まってる事で、仕方ないんですよ。疲れてい
ようが、悪いけどそれで帰ってもらわないとね」
感情を必死に隠しながら彼は言った。
これ以上の会話は無意味だと思い、僕はその駅員に捨て台詞を吐いて、その
場を去った。
「理不尽な世の中ですね!」
彼がどんな顔をしていたか、僕は見る気もしなかった。
このまま帰るには、僕は疲れ過ぎていた。2、3、考えを巡らせて、すこし
遠回りになるが、大江戸線で帰る事にした。
上野駅前交番で、上野御徒町駅の場所を尋ねる。
「ああ、この道まっすぐいって、松坂屋の手前」
かったるそうに言う若い警官に軽く会釈して、駅の入り口を目指す。しかし、
松坂屋の手前にあったのは、階段の入り口だけだった。疲れや呆れや怒りが
入り混じった感情がどっと押し寄せてきた。集中力を無くしたせいか、エレ
ベーターの入り口を見つけるのに2〜30分もかかってしまった。
地下へ降り、もそもそと切符を買おうとしていると、後ろから中年の男性が
笑顔で声をかけてきた。
「何かお手伝いしましょうか?」
ここまでの経緯があったせいか、思わず涙が出そうになるくらい嬉しかった。
その人に切符を買ってもらい、大江戸線に乗り、築地駅で降りる。銀座の昭
和通りを進んでいるとデニーズが目にとまり、中に入る。雰囲気も良かったし、
店員さんも親切で、また目頭がやや潤んだ。
19時過ぎ、精も根も尽き果てて部屋に辿り着いた。
この日1日で、僕はある事を学んだ。それは、
理不尽な世の中に対して理不尽だと叫んでもどうにもならない
ということと、
それでも世の中にいい人はいるのだ
ということだ。
生きていく中で、どれだけいい人に巡り会えるかというのは、その人の資質
や努力によるものだと、改めて思った。
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written at 5.5.2002
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